山形ローカル麺 [Fall Lineより]




〜話:石橋仁(いしばし・じん)〜



おっとり大らか。

果実が実る土地、温かい人柄、余韻の残る方言。

スキーもさることながら、山形がもつ心潤すような空気にもう一度触れてみたくなった。今年もまた、スキーを背負って南下してみよう。一路、東北南部、山形県へ向った。





 話は変わるが、山形県がラーメン消費量日本一だということをご存じだろうか。僕はまったく知らなかったし、初めて聞いたときも「まさか…」としか思えなかった。なんといっても僕は福岡県出身、北海道在住だ。ラーメンは博多とんこつ、札幌味噌、旭川醤油くらいしか頭にない。しかし事実は思い込みを簡単に打ち砕いた。

 山形にはラーメン店がとにかく多い。国道を走れば至る所に看板を見つける。いわゆる店舗といえる店構えから、普通の民家に暖簾だけ下げたような店(家?)まで見受けられる。実際、僕らが立ち寄った一軒は、普通の民家の玄関から靴を脱いで上がって、仏壇からテレビが置かれているお座敷に案内された。待っている間も、畳や線香の匂いが親戚の家にでも遊びに来たようだったが、味に間違いはない。その中でも山形市内(平清水)の中華そば「八幡屋」は唸るほかに何も言葉がなく、汁まで飲み干すほどだった。山に持っていく水筒にもこのスープを容れて欲しいくらいだ。

 さらに、山形県はソバの県民当りの店舗数も日本一らしい。そして、地域色が濃く残っており、たとえば内陸部の「板ソバ」はまな板ほどの大きさの箱の上に、太麺のソバがごっそりと盛られてくるものだし、河北地方の「肉ソバ」は鶏ダシ醤油味の冷たい汁に入ってくる。通に言わせれば「つったい(冷たい)肉ソバ」には七味ではなく、白コショウをかけて食べるのだとか。これにはすっかりハマった。

 山形の麺文化は多様多彩であり、そのどれもが際立っている。これまでの自分が井の中の蛙であった。すっかり脱帽だ。滞在中、毎日毎回、スキーと麺を折り重ねていくうちに、どちらが本題か判らなくなったのだった。かくして山形ローカル麺の旅は続いた。





「ローカルスキー場 → 移動 → 麺 → 移動 → 別のローカルスキー場」という基本ルーティン繰り返した山形の旅、その前半戦。訪れた4軒のうち、知人の紹介が2軒。あとは移動中にたまたま出くわした店に入った結果、それがすべてハズレなし。


1、知人の案内で訪れたのが最初の一軒、中華そばの「八幡屋」。澄んだ牛骨スープにやや中太の縮れ麺。これでたしか500円。ここで「麺の旅」に火がついた(註:山形ラーメンの四天王らしい)。

2、Asahi自然観(朝日町)からの帰路で立ち寄った「手打ちそば処 蕎楽」。更科と田舎を合わせ盛った板そば。お上品でした。

3、八森山スキー場(鶴岡市)の麓、三瀬の街中にある「かいうんや」のチャンポン麺。すり鉢に入ったボリュームは圧巻。

4、「肉ソバなら」と教えられて訪ねた一寸亭本店。親鶏の澄んだダシと歯ごたえある田舎そば。うっかりソースカツ丼も頼んでしまった。


 かくして山形麺の旅は続く。








抜粋引用:Fall Line 2015(1) (双葉社スーパームック)
ローカルを巡って「ゆかしき山形の冬(前編)」石橋仁
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by zuss2 | 2014-10-14 07:59 | ちょろ吉
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